ダメンズ恋愛教本

僕は貴女のサンドバックじゃないよ。と言った時にわかってたくせに、それでもズルズル続けた恋はやっぱりダメでした。

舞の話 2

すごく速いんですよ。ぴゅーーんって!」

 

少し大げさに、それでいてそれはそれは楽しそうに語る彼女は大人たちの輪の中にいた。

 

人懐っこい笑顔をうかべ、年上の男性達に嬉しそうに話しをするのが彼女、 舞 だった。

その、少しヘラヘラしているともとれる笑顔に大人…いや一回り以上も年の違うおじさん達はそれはそれは嬉しそうに鼻の下を伸ばしていた笑

 

見ない子だな…

僕はその輪を遠巻きに見て自分の道具を整理していた。

 

 

 
 

 

季節は初夏。

心地よい日差しももう少しで憎くてギラギラしたものに変わりそうだ。

 

由良さんがいなくなってからも僕は趣味を続けていた。


本当だったら、その趣味も辛くて続けれなくなるかもしれなかったけれど、続けることが出来ていたのは、彼女に対する思いが恋愛ではなく、一種の憧れに近い物だったからかもしれない。

それと、もしかしたらまたどこかで再会できるかもしれないと思っていたから。

 

もし会えたらこう言うつもりだ。

 

ありがとうございました。

僕も大好きでした。

 

全ては過去形。

ただ、ちゃんとそれが言える立派な男…と、いうか立派な人間になっていたかった。

 

ただ、これは僕のエゴなので会えなくてもいい。

元気でどこかで今日もその素敵な笑顔で笑っていてください。

 

 

 

「おーい!ぴす!ちょっとこの子に教えてやれ!」

 

首をもたげるとおっさん達の輪が僕の方を向いている。

 

「舞ちゃん、お前と同じ道具使っているんだ」

「お前、色々教えてやれ」

 

僕の返事を待たずに 舞 が駆けてくる。

「よろしくお願いします!」

 

遠くでいい子だな~とか、いい匂いがした~(多分言ってた)とおっさん達が口々に言いながらこっちを見ている。

 

近くでは舞がにへら…と笑っている。

 

その両方を交互に見つつ思ったのは、僕に拒否権は無いのだな…という事。

おのれ、クソおやじ共め。

 

大人→おじさん→クソおやじと、仲間たちの評価が変わっていく。

 

その頃、僕は地方でも名が知られ、全国大会にも出場するほどになっていて、また、その道具を使うのがこの近県では僕を入れて数名しかいない。

その道具を彼女が使うというのだ。

白羽の矢が立つのは至極当然であった。

 

しかし、頼られるのは嫌じゃないし、頼ってくるのが女子大学生というのだ。

僕だって男だ。

しかもダメ男だ。

悪い気はしない。

 

へらへらにこにこ笑っている彼女を再度見て、ぎょっとした。

 

リスカ跡だ。

 

この時期に長袖な事に少々違和感を感じていたのだが、理由はそれだ。

 

初めて見たそれに僕はたじろいだ。

 

 

これが、僕をめちゃめちゃにした 舞 との出会いだ.