ダメンズ恋愛教本

僕は貴女のサンドバックじゃないよ。と言った時にわかってたくせに、それでもズルズル続けた恋はやっぱりダメでした。

由良さん 3

「ぴすくん もう今度の大会でなよ!!」

突如横で由良さんが、大きな声を上げる。

 

 

え?…え…?

 

僕は声にならない声でコミュ障を遺憾なく発揮する。

 

 

「とりあえず基礎っぽいことはできてるから、すぐに初心者むけの大会にエントリーしよう!」

由良さんは興奮気味に捲し立てる。

 

 

え…?え…?

再度コミュ障を発揮する僕。

 

…お前はカオナシか。

今の僕がそばにいたらそう突っ込みたい。

千に酷いことしたら許さないからな!!

 

 

仲間たち5人と練習会場に向かう道すがら自己紹介をしながら得た情報によると、由良さんはこのグループ?の中心人物であり、かなり上手な人の様だった。

大会に出て何度も優勝しているらしい…

(後で本名で検索すると入賞履歴がでてきた)

 

こんな華奢な人が…

彼女の綺麗な後ろ姿を見ながら歩いていると不意に彼女と目が合う。

不意に笑顔を作る彼女。

固まりかけた精一杯の笑顔を送り返す僕。

 

会場に着き各々が準備に散っていく。

 

その時由良さんが不意に話しかけてきた。

「ぴすくん。ぴすくんって初めてどの位?」

「まだ2ヶ月です。やっと道具揃えたくらいで…」

「ふ~ん。それでこうやっていきなり輪の中に飛び込んでくるのってすごいよ!」

「やっぱり初心者は…もうちょっと練習してからが良いですかね…?」

 

「それはやらない言い訳だよ。」

僕は少し驚いた。

彼女の瞳の鋭さが少し増す。

「そうやって、やらない理由を探してお友達ごっこする人いっぱい見てきた。

 楽しむのも大事だけど勝つのも大事だよね。競争だもん」

 

彼女は道具の一つを手に取った。

「さて、やってみよっか!」

顔をあげた彼女は駅で会った時と少し違う表情をしていた。

 

オフ会のメンツの男性が一人、こちらを見ている。

目が合うと彼は笑いかけてくれた。

 

 

僕は由良さんに促されるままにそのまま、試技にはいる。

ほぼ未経験の僕は 由良さんに付き添ってもらう。

緊張の中、最初の試技…

成功…

 

 

 

突如、横で由良さんが大きな声を上げる。

 「ぴすくん もう今度の大会でなよ!!」

 

オフ会のメンツが何事かと一斉に振り向く。

興奮気味の由良さんがすぐ近くで大会にすぐにエントリーしようと捲し立てる。

 

不意に鼻孔を彼女の香りがくすぐる。

甘い。金木犀のような、でも、少し違って。

頭が少しくらっとした気がした。

幻惑的な。

すこし妖艶な。

後で知ったが練香水というものらしい。

 

この時の香りを僕は一生忘れない。